VESÉRIOS — 心に残る瞬間のために
ときに、理由を言葉にできるより先に、心が動くことがあります。
何気ない一日の途中、ふと誰かの顔が浮かぶ。ひとつの笑顔が、その瞬間を過ぎても長く心に残る。それは愛する人かもしれない。会いたい人かもしれない。あるいは、記憶の中のかつての自分かもしれません。
VESÉRIOSの始まりは、その感覚でした。Tシャツの前面を埋めたいと思ったからではなく、とても小さく個人的な思いを、身にまとうものの一部にできるだろうか、という問いから生まれました。
制作の中で生まれた言葉のひとつが、次の一行です。
理性の心さえ揺り動かす、鮮やかな微笑み。
言葉は何度も書き、考え直し、書き換えました。デザインの一部になる前に、それ自体が意味を持っていなければならないと考えたからです。
詩は、グラフィックの完成後に添えたものではありません。詩そのものがグラフィックの一部になりました。星、繊細な線、文字、数字、バーコード、コードのような要素。それらを、感情と構造のあいだにあるひとつの視覚言語として組み立てていきました。
離れて見ると、まずひとつの構成として映る。近づくと、言葉が姿を現す。さらに近づけば、小さなディテールが見えてきます。
すべてを一度に理解する必要はない。最初に見えるものもあれば、後から気づくものもある。そういうあり方を大切にしました。
Tシャツそのものも、同じ考え方でつくる必要がありました。
良質なコットンTシャツは数多くあります。けれども今回は、単にグラフィックを載せるのではなく、それと調和するボディが必要でした。繊細な文字と線を明瞭に表現できる表面。単体でも存在感がありながら、重すぎず硬すぎない生地の厚み。その両方を求めました。
選んだのは、アメリカ産SUPIMA®コットン100%による175gsmのボディです。比較的なめらかな天竺の表面はグラフィックの細部を生かし、ほどよい厚みは身体の動きに自然に沿います。
しっかりとした質感がありながら、重く感じにくい。暖かな季節には、そのバランスが大切です。
SUPIMA®を選んだのは、名前の価値だけが理由ではありません。VESÉRIOSを着たときの見え方、動き、肌ざわりに、この素材が適している必要がありました。
配置にも同じように時間をかけました。グラフィックを中央に置いて終わりではありません。その大きさ、襟ぐりとの関係、周囲の余白。そのすべてが、着用したときの印象を左右します。
位置が高すぎれば襟元と競い合い、低すぎれば顔まわりから視線の重心が離れる。大きすぎれば、着る人よりもグラフィックが主役になってしまう。それは避けたいことでした。
フロントには多くの情報があります。バックまで同じである必要はありません。
背中の襟元の下には、小さなVスターの刺繍。裾の近くにはÉ TOILEのラベル。存在感を強めるためではなく、最初の印象の後に、ささやかな痕跡を残すためのディテールです。
フロントは大きな物語を伝え、バックには後から見つける楽しみを残しています。
色が変われば、同じデザインの印象も変わります。ホワイトはグラフィックに余白を与え、オリーブは奥行きと落ち着きをもたらします。暖かな色には太陽や肌の温度が宿り、涼やかなグレーではコントラストが変わる。ひと目で同じ一着とわかりながら、その佇まいは異なります。
色は、服を取り巻く景色にもつながっています。海に散る日差しは夜空の星のように見えることがある。水面のさざ波は、布のひだのように動く。肌の温もり、反射する光、海の深いオリーブ色、夏から秋へ移るころの赤。そのすべてが、ひとつの視覚的な物語になりました。
こうしたつながりは、色の意味を決めつけるためのものではありません。私たちが気づいた瞬間であり、見る人が別の何かを見つけられる余白でもあります。
VESÉRIOSは、特定の人、気分、着こなしだけのものとして生まれたわけではありません。
ある人が着れば静かで自然に見え、別の人が着ればもっと表情豊かになる。Tシャツが着る人を定義するのではなく、その人自身の何かを持ち込める余白を残したいと考えました。
制作のあいだに、言葉もグラフィックも変わり、異なるボディを比べ、小さなディテールを見直しました。何かを加えることが前進になる場合もありましたが、多くの場合は、削ること、書き直すこと、もう一度試すことが必要でした。
かけた時間そのものが、一着の価値になるわけではありません。大切なのは、そうした選択の後に何が残ったかです。
肌に心地よい生地。自然に動く重さ。存在感はありながら、着る人のための余白を残したグラフィック。すぐに主張する必要のないディテール。
そして、誰にとっても同じ意味を決めつけない言葉。
なぜなら、同じ気持ちも、抱く人によって変わるからです。
パートナーを思い浮かべる人もいれば、親や子ども、会えなくなった人、過去の自分を思う人もいるでしょう。その気持ちを胸にしまっておくことも、誰かに贈りたいと思うこともあります。
思いがけず、一着の服がある瞬間と結びつくこともあります。
あの日、着ていた服。そこにいた人。感じたこと。
VESÉRIOSには、そんな瞬間のための余白を残しました。瞬間の意味を決めるのではなく、あなた自身のものになる記憶を受け止められるように。
心に残り続ける瞬間のために。
É TOILE