Vivienne Westwoodというエレガンス

Vivienne Westwoodというエレガンス

ヴィヴィアン・ウェストウッド、というブランドに私が出会ったのは、ありがちだけど、漫画「NANA」の中だった。

小学5年生の時に読み始め、NANAの世界のとりこになり、最新話をいち早く読みたくて、当時毎月買っていた「りぼん」から、NANAが連載していた「クッキー」に乗り換えた。

NANAの作者である矢沢あい先生が元々ヴィヴィアンのファンらしく、作中でキャラクターが身につけているヴィヴィアンのコレクションがとにかく魅力的だった。

 

高校生になって定期入れが必要になり、ネットで吟味してヴィヴィアンのものをゲットした。私のファースト・ヴィヴィアン。ロンドンに留学した時、ヴィヴィアンの原点とも言える「ワールズ・エンド」に行った。外から何枚も写真を撮って、やっと店内に入っても興奮はおさまらなかった。親切な日本人の店員さんと話しながら、真っ赤な財布と、トレードマークのオーブの小さなピアスを買った。本当は「NANA」のキャラクター達が履いていた「ロッキンホース」シリーズの靴が欲しかったけど、転びそうでやめた。

 

 

12月28日に『ヴィヴィアン・ウェストウッド 最強のエレガンス』が公開される。77歳の今もなお現役のデザイナーとして奔走する彼女の刺激的な半生に迫るドキュメンタリー映画だ。

原題は『Westwood Punk, Icon, Activist』ヴィヴィアンというブランドを説明する時「アヴァンギャルド」という言葉を用いる私には、邦題の「エレガンス」がいまいちピンとこなかった。ヴィヴィアンはロックでパンクで、前衛的なブランドだと思っていたから。観終わる頃にはその考えもしっかり覆されていたのだけれど。

 

ウェストウッドという姓は、最初の結婚の時のものだ。最初の夫であるデレクとは3年ほどの結婚生活で終わりを迎えているが、離婚の理由をヴィヴィアンは「私の知的好奇心が満たされなかったから」と話す。探求者の顔が見える。

その後出会いパートナーとなったマルコムとは、ワールズ・エンドの経営を共に行った。マルコムは音楽プロデューサーとしての才能があり、セックス・ピストルズも彼が発掘した。ピストルズの衣装をヴィヴィアンが作り、パンクの歴史を作った。

ヴィヴィアンにデザイナーとしての成功の兆しが見えてくると、それに嫉妬したマルコムは彼女の足を引っ張るようになる。一度は経営破綻状態にまで陥ったというのだから驚きだ。

マルコムとの関係を解消したのち、およそ10年ほど経ったころ、現在の夫であるアンドレアスと結婚した。アンドレアスはヴィヴィアンの教え子だった。ショーを見た彼が彼女にダメ出しをし、その後の作業を手伝ったことから関係が始まったと話していた。ヴィヴィアン・ウェストウッドというブランドは、彼女一人のデザインで成り立っていると思い込んでいた私にとっては衝撃の事実だったが、今やコレクションのほとんどをアンドレアスが担っているらしい。25歳下のパートナーのセンスに全面的信頼を置いているのだろう。

 

原題にある「Activist」としての彼女の姿は私に衝撃を与えた。環境保護活動などに励む彼女は、デザイナーとしてだけでなく、活動家としても現役なのだ。パンクなデザインの戦車に乗って首相官邸に抗議に向かう姿はこの上なくエネルギッシュだった。

 

映画を通して知った事実として一番ショッキングだったのは、ヴィヴィアンがしばらくは英国内でも一流と認められていたわけではなく、批評家からこき下ろされ、聴衆から嘲笑われていたブランドだったということだ。

前述した通り、私はヴィヴィアンを知ったその時から憧れの対象としてブランド自体を崇めていた。イギリスに行くとなればヴィヴィアンを絶対に買わなくては、と思っていたし、イギリスを代表するブランドの1つなのだと信じていた、昔から。

だから、ヴィヴィアンが実際に出演したテレビ番組で新しいコレクションを紹介する場面、スタジオで笑いが起こり司会者も一緒になってブランドをバカにしたようなコメントをするシーンでは背筋が凍るような、いやな感覚だった。その時のことについて、ヴィヴィアンの友人でモデルのサラ・ストックブリッジは「私は怒りで震えたけどヴィヴィアンは平然としていた。パンクな反応ね。」と話す。

その後1990年、その翌年と2年連続でデザイナー・オブ・ザ・イヤーを受賞した。その姿はやっぱりパンクで、そしてエレガントだった。

 

 

そういえば、大学生になってから、きちんとした手帳が欲しくて、ヴィヴィアンのものを買いに行った。その時はちょうどFNO(ファッションナイトアウト)の開催日で、店内ではヴィヴィアンのデザインに身を包んだ、いわゆるヴィヴィアンマニア達がシャンパンを片手に談笑していた。ロックでパンクでアヴァンギャルドなブランドだけれど、それを身に纏った人たちの姿はどこかエレガントで、彼らに強い憧れを抱いたことを思い出す。

ヴィヴィアン本人の「最強のエレガンス」は、ブランドを通じ、ブランドを愛する人たちに伝染するのだ、きっと。